2025年前期の朝ドラ『あんぱん』。第10週のタイトルは「生きろ」。
物語は戦争の時代へと大きく舵を切り、登場人物たちの運命も激しく揺れ動きます。それぞれが大切な人のために、あるいは自分の信念のために“生きる”選択を迫られます。
この記事では、あんぱん第10週(第46話~第50話)のあらすじをご紹介します。ネタバレにご注意ください。
あんぱん|第10週のネタバレとあらすじ
あんぱん第46話|屋村草吉が去った理由
あんぱん第9週のラストで「朝田パン」を去った屋村草吉(阿部サダヲ)。その理由が、46話で明かされます。
実は屋村は若いころ、第一次世界大戦中に日本人義勇兵としてイギリス軍に従軍していた過去がありました。東京・銀座のパン店で修行していた屋村は、ふとしたきっかけでカナダへ密航し、そこからヨーロッパ戦線へ。
塹壕の中で飢えと寒さに耐え、倒れていく仲間を目の当たりにしながら、乾パンを分け合い食いつなぐ日々。戦争の悲惨さと絶望的な体験を、朝田釜次(吉田鋼太郎)に打ち明けます。
そんな過去があるからこそ、軍の乾パン製造依頼にはどうしても応じられなかったのです。
あんぱん第47話|戦争のはじまりと小麦配給制
1941年12月8日、日本はアメリカ・ハワイの真珠湾を奇襲攻撃し、ついに太平洋戦争が開戦します。翌年からは小麦粉が配給制となり、「朝田パン」はパンを焼けない状況に追い込まれていました。
一方、東京では美術学校の同級生・辛島健太郎(高橋文哉)が柳井崇(北村匠海)に、赤紙(召集令状)が届いたことを伝えます。二人にとっての「最後の晩餐」は、ありふれたカレーライスでした。静かな別れが、戦時下の不条理をより一層際立たせます。
あんぱん第48話|若松次郎の帰還と新たな恐怖
辛島が入隊のため福岡へ旅立って数日後、高知の若松家には次郎(中島歩)が予定よりも早く帰宅します。
のぶ(今田美桜)は再会を喜びますが、次郎は自分の乗っていた商船が軍に徴用され、今後は兵員や武器弾薬を運ぶ輸送船として改造されると明かします。
それはつまり、航海のたびに敵の潜水艦や駆逐艦の攻撃を受ける危険な任務になるということ。のぶは言葉を失い、次郎の身を案じる気持ちに押しつぶされそうになります。
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あんぱん第49話|教師としての苦悩、崇に赤紙が届く
のぶが教える小学校の生徒・紀子の兄にも赤紙が届きます。紀子は兄にもう会えないかもしれないと不安を口にしますが、のぶは「日本は戦争に勝って、お兄さんは必ず帰ってきます」と励まします。
しかし、のぶ自身もその言葉を本心から信じられずにいました。子どもたちに本音で接することができない苦しさを、妹・朝田蘭子(河合優実)に打ち明けると、「愛国の鑑にも悩みがあるのか」と冗談めかして返されます。
そんな中、崇のもとにもついに赤紙が届き、帰郷を促す電報が届きます。物語は大きく動き始めます。
あんぱん第50話|崇、出征へ
崇は高知の部隊に入隊するため帰郷し、町を挙げての壮行会が開かれます。人々で賑わう中、母・登美子(松嶋菜々子)も姿を見せ、「必ず生きて帰ってきなさい」と繰り返します。そしてのぶも、次郎には言えなかった本音を崇にぶつけます。
「生きて帰ってこい」というその言葉は当時の風潮では「非常識」とされ、2人は危うく拘束されそうになります。崇が間に入り、場をおさめました。
その後、崇は九州・小倉の連隊に転属。そこで出会ったのが、どこか異様な雰囲気を放つ上等兵・八木信之介(妻夫木聡)でした。彼の存在が、今後の展開に大きな影響を与えていきそうです。
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あんぱん 第10週のあらすじ解説
この週で描かれた柳井崇の出征には、実在のモデルであるやなせたかしさんの実体験が投影されています。やなせたかしさんは戦時中、近眼でありながら徴兵され、九州・小倉の野戦重砲隊に配属されました。
それまで製薬会社でグラフィックデザイナーとして働いていたやなせたかしさんは、戦場では小銃よりも重い砲弾や装備を担ぐ過酷な任務に従事しました。
やなせたかしさんの自伝『アンパンマンの遺書』には、理不尽な戦争の中でも「正義とは何か」「人を救うとはどういうことか」という問いが記されています。
第10週の「あんぱん」のあらすじは、まさにその思想の原点に迫る展開と言えるでしょう。
次郎の任務の危険性
のぶの夫・次郎が乗る輸送船は、軍の艦艇と違い防御性や速度が劣るため、敵の潜水艦や航空機から狙われやすい立場にあります。商船が軍用に改造されただけの船で海を渡ることは、陸軍に所属する兵士と同等、あるいはそれ以上に命の危険を伴います。
とくに当時、フィリピンと台湾の間にあるバシー海峡は「魔の海峡」と呼ばれ、日本の多くの輸送船がここで沈没しました。
のぶの心配は現実的であり、次郎の安全が確保される保証はまったくなかったのです。
第10週のあんぱん「生きろ」は登場人物たちの“決意”の週
戦争が本格化し、登場人物たちそれぞれに過酷な現実が突きつけられる第10週。
屋村の過去、崇の出征、次郎の危険な航海──。
「絶望の隣には希望がある」という前週の言葉を受けて、今週は「それでも生きる」というメッセージが強く込められています。
のぶをはじめとする登場人物たちが、それぞれの立場で「命」と「信念」に向き合うこの週。物語はさらに深く、重く、そして人間味を帯びて進んでいきます。
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